睡眠に関する噂・都市伝説は色々とありますが、なかには大きく的を外れたものもあります。
その代表的なものが、「睡眠は90分サイクルが理想」というものです。
睡眠時間は90分の倍数がいいので、4時間半・6時間・7時間半・9時間などがいいというものです。
この90分の倍数がちょうど目覚めやすくすっきり起きられるという意味ですが、これは全くの嘘です。
私もこれを信じたせいでだいぶ損をしましたが、そもそもの睡眠のメカニズムを考えれば何が嘘なのかが見えてきます。
「睡眠サイクルは90分が理想」は嘘!
睡眠時間は90分の倍数にしましょうということはよく聞く話だと思います。
4時間半・6時間・7時間半・9時間などの90分の倍数が、もっともすっきり目覚められるいい睡眠時間という認識です。
私自身も昔はこれを信じて、「もう今から寝ると6時間半しか寝られないから、あと30分起きて6時間睡眠にしよう」ということをやっていました。
これは結論からいれば大きな間違いです。
私の例であれば、6時間睡眠よりは6時間半睡眠の方がまだいいですので、早く寝たほうがよかったです。
最適な睡眠を考えると、どちらにしても足りないですが…
まだまだ睡眠に関してはわかっていないことが多いですが、この90分サイクルの睡眠がいいという話は嘘だと考えていいと思います。
嘘だと理解して、90分サイクルにこだわらず少しでも長い時間眠るという方が、圧倒的に寝不足が多い現代の日本人には適切な睡眠方法になると思います。
では、何がどう「理想の睡眠は90分サイクル説」が嘘なのでしょうか?
この「理想の睡眠は90分サイクル説」は大きく2つの誤った認識があります。
それを1つずつ見ていきます。
「睡眠サイクルは90分が理想」が間違いである理由①睡眠段階
まずはこの「90分」の根拠から見ていきます。
90分サイクルがどこから出てきたかというと、レム睡眠とノンレム睡眠の時間から来ています。
睡眠の種類は、大きくレム睡眠とノンレム睡眠に分類できます。
よくレム睡眠は浅い睡眠で、ノンレム睡眠は深い眠りと言われますが、これも誤りです。
レム睡眠とノンレム睡眠はそれぞれ違った役割があります。
レム睡眠はREM(Rapid Eye Movement)睡眠の略です。
日本語に訳すと、急速眼球運動を伴う睡眠と言えます。
レム睡眠の特徴で、寝ている間に眼球が急速に動くことがあります。
このレム睡眠中は、姿勢保持筋という身体を支える筋肉が弛緩します。
つまり、筋肉が休んでいる段階です。
このレム睡眠が不足すれば、姿勢が悪くなりスポーツパフォーマンスの低下なども起こります。
ノンレム睡眠はNon-REM(Non Rapid Eye Movment)の略で、急速眼球運動を伴わない睡眠です。
ノンレム睡眠中は脳のメンテナンスを行っていると言われています。
このレム睡眠とノンレム睡眠は、睡眠中に交互に現れます。
このサイクルが90分と言われていますが、大体90分というのは正解です。
ただ、これには個人差があり変動します。
睡眠検定ハンドブック(全日本病院出版社)によると、このレム睡眠とノンレム睡眠は約80分~100分周期で訪れると言われています。
レム睡眠とノンレム睡眠を合わせて80分~100分が、睡眠中に4~5回繰り返されます。
もちろん、90分の人もいると思います。
正確には、90分の時がある人もいるだと思います。
ただ、これが80分だとすると5周期繰り返せば80分×5回=400分(6時間40分)です。
先ほどの90分サイクルの6時間・7時間半とは大きな差があります。
100分でも同じ分ずれますし、85分でも85分×5回=425分(7時間5分)です。
6時間・7時間半とはだいぶ離れた数字です。
つまり、90分サイクルが少しずれただけでも4~5周期も繰り返せば大きな差が生まれますので90分サイクルにこだわってもあまり意味がありません。
「睡眠サイクルは90分が理想」が間違いである理由②起床のメカニズム
先ほどは、90分サイクルに合わせるのが難しいという話でしたが、今度はそもそも90分サイクルに合わせる意味があるのか?という話です。
結論から言えば、その意味はありません。
90分サイクルに合わせる根拠として、「目覚めやすい」という理由が挙げられます。
ただし、そもそも人間には目覚めるための機能が備わっています。
その1つが、コルチゾールというホルモンです。
コルチゾールはストレスホルモンと呼ばれることもあり、悪者扱いされがちです。
しかし、睡眠を考える上では非常に重要なホルモンです。
コルチゾールの日内変動は、就寝時に最小の分泌となり、起床時に最大に分泌されます。
コルチゾールが分泌されることで、血糖値が上昇して活動する準備ができます。
また、光を浴びることで睡眠に関わるホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられて覚醒が始まります。
メラトニンはコルチゾールとは逆に、就寝時で最大に分泌して、起床(強い光を浴びる)とともに減少していきます。
このようなホルモンの働きによって人は目覚めます。
ただ、睡眠時間がまだ不足している状態では、まだ覚醒させるためのホルモン分泌は不十分です。
目覚まし時計で叩き起こすのは、このような身体が起床に向かう準備をしていない状態で起きることになりますので、身体には大きな負担がかかります。
これは個人的な意見で根拠となる実験などはありませんが、まだ起床の準備ができていない状態から突然血液を全身に強く送り出し始めるので心臓の疾患などにも繋がるのではないかと思います。
(どちらかというと、人道的な実験で確認するのは難しいので実験結果など出せないと思いますが。。。)
このような起床(覚醒)のメカニズムがあるものの、90分サイクル(レム睡眠とノンレム睡眠の間)で覚醒の準備ができるという訳ではありません。
4時間半・6時間などはかなりの高齢者か極端なショートスリーパーでない限り不十分な睡眠時間ですので、その状態で無理に起きることは様々な悪影響が身体に起こると考えられます。
これが、「睡眠時間は90分の倍数」にこだわるべきでない理由です。
理想の睡眠時間とは?
このように十分な睡眠時間が確保できれば、人間は勝手に起きるようにできています。
もちろん、ストレスや外的環境で不十分な睡眠時間で起きることも多々あります。
ただ、目覚まし時計で90分サイクルを狙って起こすことは、睡眠不足を招く上に身体に負担のかかる起き方になるだけですのでお勧めできません。
理想の睡眠時間は人によって異なりますが、成人であればおおむね7~8時間が適切と言われています。
8時間と聞くとかなり長いと感じる方が多いと思います。
ただ、ここ50年程で日本人の睡眠時間はかなり減っています。
それまでが寝過ぎていた、ここ50年で睡眠時間が短くても大丈夫に進化したというならわかりますが、そんなことはないと思います。
それだけ睡眠不足の人が増えているという証拠だと思います。
最適な睡眠時間の解説はこちらから
日本人の睡眠時間の推移はこちらから
90分サイクルにこだわらず、少しでも睡眠時間を延ばす。
これが、睡眠不足が蔓延している今の日本人のとるべき対策だと思います。
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