忙しい現代人の平均睡眠時間はどんどん短くなっています。
厚生労働省の調査では、成人の日本人の4割は平均睡眠時間が6時間以下と言われています。
「睡眠時間は6時間あれば大丈夫」と感じている人もいるかもしれません。
「睡眠時間は90分サイクルが理想」という情報が知られるようになってから、6時間が1つの基準のように扱われることが増えているように感じます。
しかし、これらには色々な問題があります。
まずは90分サイクルも誤りですし、6時間睡眠を続けた場合の脳の影響はかなりの問題を抱えていることが分かっています。
そんな誤解をされている「睡眠時間6時間」を解説していきます。
平均睡眠時間6時間では足りない!睡眠時間6時間で脳に起こること
適正な睡眠時間は個人差がありますので、一概には言えません。
ただ、大まかな傾向はあります。
日本ではなぜか「睡眠時間は6時間あれば大丈夫」と考えている人が多いようです。
その背景には、「睡眠時間は90分サイクルがいい」という理由があります。
90分サイクルとは、90分の倍数の時間睡眠をとるのがよいとされているもので、4時間半・6時間・7時間半などの睡眠時間が推奨されています。
ただ、この90分サイクルの睡眠時間がよいとするものは、間違いであると考えられます。
90分サイクルはレム睡眠・ノンレム睡眠のサイクルから言われていますが、これは90分とは限りません。
また、適正な睡眠時間をしっかりとれれば自然と目が覚めますので、無理に90分にこだわる理由もありません。
詳しくは、睡眠は90分サイクルが理想は嘘?で解説しています。
この90分サイクル説でなぜか6時間睡眠がいいように思われがちですが、実際に6時間睡眠では不足している人がほとんどです。
80代などの高齢の方であれば大丈夫かもしれませんが、20代~50代くらいで適正な睡眠時間が6時間ということは非常に稀だと思います。
6時間睡眠の場合、脳で起こっていることはかなり危険です。
睡眠の役割として脳のメンテナンスがありますが、睡眠不足ということは脳のメンテナンスが不十分ということです。
睡眠時間6時間以下の脳は飲酒レベルの働き
「睡眠時間は6時間あれば大丈夫」には何の科学的な根拠もありません。
ショートスリーパーや高齢者であれば当てはまりますが、ショートスリーパーは遺伝的に決まっていると言われ、後天的になれるものではありません。
また、睡眠時間が6時間以下だと脳の働きが低下してしまうことが分かっています。
そして、その脳の機能が低下するのは一体どの程度なのかという実験が、アメリカの大学で行われました。
その結果が、6時間以下の睡眠を2週間続けた結果、脳の働きは飲酒時と同じレベルまで低下すると発表されました。
飲酒と同じレベルというのは、この実験では缶チューハイ2杯程度と言われています。
お酒の強さによって缶チューハイ2杯の程度は異なると思いますが、大まかなイメージとしては「ほろ酔い程度」のイメージでいいと思います。
脳の働きが低下している状態であれば、記憶力の低下や判断力の低下が起こります。
この為、飲酒運転が法律で禁じられて厳しい罰則があります。
ただ、寝不足運転は法律で罰せられていません。
交通事故と睡眠時間の調査結果などは特にありませんが、交通事故の原因の1つは睡眠不足の可能性が考えられます。
アメリカの大学で行われた睡眠時間の実験結果
では、実際にアメリカで行われた睡眠時間と脳の働きの実験はどのようなものなのでしょうか。
この実験は、ペンシルベニア大学とワシントン州立大学が合同で行った実験です。
平均睡眠時間が7~8時間の健康な男女48名を集め、14日間4時間睡眠、6時間睡眠、8時間睡眠のグループに分けて、その影響を調査するという内容でした。
この結果、6時間睡眠のグループでは判断力の低下や注意力低下、認識力の低下などが見られました。
この判断力などの低下は、血中アルコール濃度0.10%の状態と似た反応時間を見せました。
これが、「6時間睡眠の脳の働きは飲酒と同じレベル」と言われる所以です。
ちなみに、4時間睡眠のグループに関しては脳の働きをチェックする間に居眠りをしてしまうなど、実験結果を調べるのが困難な人もいたようです。
6時間睡眠を2週間続けている人の割合は分かりませんが、厚生労働省の調査結果では日本人の4割が平均睡眠時間6時間を下回っているとしています。
つまり、飲酒と同じレベルの脳の働きの人は日本人の約4割とも言えます。
日本人の平均睡眠時間の調査結果はこちら
睡眠時間が6時間で大丈夫だと勘違いする理由
そんな実験結果を受けても「自分は6時間睡眠で十分」と思う人もいると思います。
この理由は、睡眠不足による脳の機能低下です。
慢性的に睡眠不足の人は、自信の睡眠不足を認識できなくなると言われています。
脳の働きが低下しているので、現状を客観的に認識する能力が落ちているとも言えます。
その為、寝不足の人ほど「元気です。大丈夫です。」と思っているケースがあります。
つまり、睡眠不足に関しては自分の感覚はあまりあてにならないということです。
これは飲酒レベルの脳の状態ということで、お酒に例えればわかりやすいと思います。
「俺は酔っ払ってねーよ、大丈夫だよ!」
という明らかに酔っぱらった人は、飲み会でよく見かけると思います。
6時間睡眠でも大丈夫は、この状態に近いと言えそうです。
睡眠時間6時間以下の寝不足を回復させるまでに必要な期間は?
では、実際に6時間以下の睡眠時間が続いている場合は、どのように回復させればいいのでしょうか。
睡眠時間が6時間以下の寝不足を回復させるためには、数か月程度かかると言われています。
1日徹夜した程度であれば、翌日にしっかり寝ればその影響はほぼないと言われています。
それは、断眠時間が長いほど徐波睡眠と呼ばれる深い睡眠の時間が増える為です。
ただ、長期間の睡眠不足の場合はそうすぐには回復しないと言われています。
数年以上の睡眠不足では、その間の脳の機能低下が回復するかすらまだ分かっていないと言われています。
つまり、長期間の睡眠時間はもうあとからは取り返しがつかない可能性すらあるということです。
あまりに忙しかったり突発的なトラブルがあったりした場合、学生のテスト前など1日徹夜するくらいで脳がおかしくなることはありませんが、長期間の睡眠不足は恐ろしい結果を招く危険性が指摘されています。
適正な睡眠時間とは?年代別の適正な睡眠時間
6時間睡眠では多くの人が睡眠不足と言えます。
ただ、適正な睡眠時間には個人差があります。
その適正な睡眠時間は、年齢によっても異なります。
赤ちゃんの頃は一日中寝ていますが、徐々に睡眠時間は減っていきます。
成人では安定し、高齢になると睡眠時間は短くなります。
その成人で安定している時期は、睡眠時間は7~8時間が最適と言われています。
ショートスリーパーやロングスリーパーもいますが、それでも多くはこの7~8時間が適正な睡眠時間と言われています。
睡眠時間が短い人が多いですが、6時間睡眠を続けると脳の機能が酔っ払った状態と同じになるので対策が必要です。
6時間睡眠しかとれない場合は昼寝を有効活用する!
睡眠時間が6時間で大丈夫だと勘違いしていたとしても、「では睡眠時間を7~8時間にしましょう」と言われてできる人は少ないと思います。
仕事の時間が長く、通勤時間も長くてなかなか睡眠時間を確保できないという人が多いと思います。
睡眠時間をしっかり確保する方が頭の機能もしっかりして仕事の効率は上がりますので、できるものなら単純に睡眠時間を長くすることがおすすめです。
どうしても難しければ、昼寝などを活用して少しでも睡眠時間を確保しましょう。
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